photographs:MASAHITO JUGAME



益永みつ枝
(ますながみつえ)
大阪出身。23歳で商業プランナー益永明氏と結婚。2児を育てながら10年間の専業主婦生活を送った後、1981年、広尾にF.O.B COOPを開店。生活者としての豊かな体験に裏付けられた説得力のある店づくりで、一躍注目を浴びる。現在は全国に12店舗を展開し、衣食住にわたり幅広く提案している。本音で語る益永さんの姿に憧れる女性ファンは多く、雑貨界のカリスマ的存在に。
http://www.fobcoop.co.jp/

 


W邸 多彩なライフスタイルを許容する空間プロトタイプ、F.O.Bスケルトンを採用。男性一人住まいの地上1階地下1階。2001年5月に着工。敷地面積88.23m2、1F床面積10.33・、B1床面積38.69m2


F.O.B HOMES

F.O.B COOPが「快適」「コンテンポラリー」「適切なプライス」をテーマに生活雑貨対して提案してきた視線を住宅に向けて1999年に始動。設計は、益永みつ枝氏の甥である新進気鋭の建築家・梅林克氏が代表をつとめるフォブアソシエーションが担当。

URL http://www.fobhomes.com/
e-mail fobinfo@fobhomes.com
TEL 03-5770-4826
 
生活雑貨と同じ発想で
生活容器を提案したかった


――まず、F.O.B HOMESをはじめたきっかけを教えてください。
「普通のシンプルで気持ちのいいモノがないことからF.O.B COOPを始めたように、のびやかで気持ちのいい暮らしを送れる近代住居がないことに不満を感じたことがきっかけ。ライフスタイルが多様化しているにも関わらず、画一的な住宅は増え続けているでしょ。生活者が望んでいるシンプルでクリーン、機能的で実用的な箱を発信したかった」
――外も中も真っ白ですね。
「そう。生活の基本となる家には、白がもっともふさわしい色。好きな色どりは、後から加えていけばいい。それに白は光によっていろんな色に変化するでしょ。この家も、一日中見ていても飽きないくらい多彩だし。白は日本の住宅の内装に多用されているけれど、ほとんどが妙な凹凸が施されたクロス材でクリーム色がかっている。純粋な白ってないのね。それは、家電にも言えること。青みが入っていたり、アイボリーだったり。真っ白のほうがスマートだってわかってると思うんだけど」

本当に欲しいモノ、
当たり前のモノがない国、日本


――日本の家電製品についてどう思いますか?
「日本製は電話機を筆頭に日用家電は全滅。まず普通のデザインがない。きっと日本では洗濯をしたことない人が洗濯機をデザインしてるんでしょう(笑)。リアリティがまったく感じられないもの。家事をやってごらん、楽しいよ。洗濯だって、ぐるぐる回って黒いものが白くなって出てくるの気持ちいいし、見てても面白いじゃない。どこの先進国にも劣らない技術を持っているのに、もったいないよね。でも、『他にいいモノがないから、とりあえず』って、間に合わせ主義で買ってしまっている消費者にも責任があると思う。生きる楽しみをみんな捨ててるよ。」
――どういったものが欲しいのか、ハッキリとしたイメージを消費者も持つ必要がありますよね。
「自分らしい生活を送るためには、妥協してはいけないと思うの。例えば、私が開店のために掃除機を購入した時のこと。たくさんお店をまわったけれど納得のいく商品がなくて、結局、業務用のパンフレットを取り寄せてみた。そこでやっと出会ったのが日立の病院用の掃除機。メタリックを基調としたシンプルデザイン。20年経った今でも一度も壊れず、機能が低下することもなく使えてるの。家電よりも高額だったけれど、元は取れた(笑)。業務用にはかっこいいプロダクトがあるのに、なんであのデザインを家電に採用しないのかしら?」
――長く使えることも「いいモノ」のキーポイントですか?
「デュラレックスのグラスがそうなのね。『こんなに割れにくいグラスじゃ商売にならない』と言われたことがあったけれど、それは間違ってると思う。儲けだけを考えていては、本当にいいモノは発信できない。売れるのがNo.1という考え方は、もうやめませんか?って言いたいのよ。

住空間を
基本から考え直す


――F.O.B HOMESは100年もつ家。そしてこのW邸は、2階の増築が可能といいますが……。
「家は男女が主体でしょ。子供でもなく犬でもない。大人の男と女が生活をしていくことの真実を見せたいと思ってる。そして住む人の生活の変化で軌道修正をしていけばいい。つねに快適を提供できる空間、それがF.O.B HOMES。」
――なるほど。躯体そのものにF.O.Bらしさが感じられるのはそういった発想からだったんですね。
「F.O.Bスケルトンと呼んでいて脱LDK発想なのね。基本はワンルーム空間に充実したストックルーム。これで住まうフレキシビリティーが確保できる。それでもいよいよとなった時には、壁でも天井でも壊していけばいいのよ。」
――最後の質問なんですが、W邸って小学生にとっては画用紙に見えるん
じゃないでしょうか?

「最初は落書きを心配したけど、今までつくった2軒ともまったく被害がない。ここまで完成された空間だと、子どもでも容易に手出しはできないみたいね」

――F.O.B HOMESは「東京急行電鉄」と話題の集合住宅を建設中とうかがいました。生活者の視点から発信される益永さんのプロジェクトにこれからも期待しています。

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