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| 神宮前にフレンチレストランを開いているTさんは、開店から1年半ほど経った頃、店舗に程近い瀟洒な住宅街へと引っ越しました。選んだのは、重厚な外観と洗練されたインテリアを併せ持つ賃貸集合住宅の一室です。
Tさんの住まいの玄関扉を開けると、白壁とライムストーンの床材に木製の取っ手がポイントとなる五角形の玄関ホールが。五角形の中の3面はサニタリー、LDK、ベッドルームの扉です。LDKも変則的なL字型で、住まう人の自由な発想でレイアウトが組めるようになっています。
この既視性のない居室を選んだ理由を尋ねると、
「条件の『過美な装飾ではないこと』と『ありきたりな間取りではないこと』をクリアしたからですかね」 と、深い思い入れはないご様子。 しかし、インタビューしていくにつれ、一言では言い表わせない、Tさんの根底に流れるこだわりからのセレクトであることが分かってきました。妥協せず、気に入ったものだけをセレクトしているからこそ、出合えた物件のようです。 家具や家電といった品々について尋ねると、すべてについて淀みのない答えがすぐに返ってきます。例えばダイニングテーブルと椅子について聞くと、 「`60〜`70年代につくられたオランダ製の中古家具です。プライウッドと柔らかなライン、それと思いのほか軽量な点が気に入っています。テーブルと椅子はセットなのですが、微妙に質感が違うのが残念でしたね。再塗装の工程などのメンテナンスが違うんですよ。でも、ここまで好きと思える家具と出合えることはそうそうありませんから、購入しました」 ピクチャーレールに吊られたポスターについては、 「パリで活躍している戸出喜信さんの絵です。家族みんなが好きな画家で、実家には油絵もありますが、あえてポスターを貼りました。このシンプルなインテリアに絵より合うと思っています」 テレビの横にある木とステンレスからなるプライウッドの椅子は? 「まるで小学校の椅子のような小さな座面やフォルムが好きで、実家にあった椅子を持ち込みました。深く腰掛けると背面が心地良くしなる点も良いですね」 といった風に、家にあるモノすべてにTさんならではの確固たるセレクト理由があります。「なくてもいいモノ」や「なんとなく置いてるモノ」は存在しません。これぞ、目指すべきシンプルライフだ!と深く思いました。そして、愛着を持って使われているからこそ、T邸の品々は美しいのだと納得。 また、フィリップ・スタルクの照明「ロメオソフト」 やアッキーレ・カスティリオーニの「フクシア」 など意匠性の強い製品も、アノニマスデザインと合わせることにより、個性的なインテリアの一部となっています。インテリアの問題点を聞くと、 「忙しくて、あまり掃除ができなくて・・・・・・」 と言うものの、整理整頓が行き届きホコリなど目につかない清潔な空間。 今は「寝るだけの場」となっている空間を整然とたもっているのだから、 オーナーを努め、一日のほとんどを過ごすフレンチレストランの店舗へのこだわりは相当なのでは? 「そうですね、設計も空間デザインを学んだ経験を活かして、デザイナーと一緒にやったりと、思い入れは深いです。着工後も現場監督として毎日通って、細部にわたり妥協しなかった。業者の方はやりづらかったと思いますよ(笑)。でも、その甲斐あって、納得のインテリアとなっています。もちろん、神経質なくらい自分の、そしてお客様の居心地の良さを追求しています」 |
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